男性産業保健師の鳩ぽっぽです。
今回の関連図は深達性Ⅱ度熱傷、Ⅲ度熱傷です。
この記事で知れること
- 看護学生レベルで知っておいた方がいい疾患病態情報
- 本疾患でよく出る看護診断、看護問題
- 本疾患関連図の特徴や押さえておいた方がいい知識
病態
熱傷とは、主に熱源に触れることで生じる身体損傷のことをいいます。
外傷の一つであり、緊急の処置が必要になることがあります。
看護学生では小児病棟で出会う機会の多い疾患です。
熱傷は傷害によって分類されており、軽傷から順にⅠ度、浅達性Ⅱ度熱傷、深達性Ⅱ度熱傷、Ⅲ度熱傷と分かれています。
Ⅰ度は表皮まで、Ⅱ度は真皮まで、Ⅲ度は皮下組織まで傷害が及んだものです。
Ⅰ度、浅達性Ⅱ度熱傷は入院するレベルにはない熱傷のため、今回は省きます。
深達性Ⅱ度熱傷は真皮のさらに深くまで傷害されている状態をいいます。
傷害されたことにより滲出液の漏出、炎症反応が起き、血管外に水分が出てしまいます。その結果、水疱形成や浮腫が起こります。
これが進行すると脱水状態や循環不全にいたることがあります。
また、大量の炎症性サイトカインが分泌されるため、全身性炎症反応症候群が生じ、多臓器不全へと移行する場合もあります。
皮膚バリアがなくなることにより、感染症にもかかりやすくなり、敗血症にいたることもあります。
真皮深層まで傷害されているため、神経が部分的に傷害されており、痛みをあまり感じない(知覚鈍麻)です。
また、浅達性Ⅱ度熱傷と異なり、真皮深層の血流が確保されていないため、やや白くなります。
Ⅲ度熱傷では、上記した深達性Ⅱ度熱傷と症状はほぼ同様ですが、知覚と皮膚の状態の部分です。
Ⅲ度熱傷は皮下組織まで傷害されているため、神経も完全に破壊されており、痛みを感じることがありません(無痛)。
また、血管も傷害されており、血流が完全になくなるため皮膚色は真っ白になります。炎などで受傷していた場合は炭のように黒っぽくなっている場合もあります。
炎症反応は生じますが、血管がなくなるため、水分が細胞からそのまま抜けていき、水疱形成することもありません。皮膚は乾燥し、硬く、革のようになります。(関連図には図の都合上記載していません。)
熱傷には重症度を決める考え方が他にもあります。
それは範囲です。
やけどの面積の計算方法には様々のものがありますが、大人では9の法則、小児では5の法則が良く用いられます。面積は下図の通りです。成人ではⅡ度熱傷が30%以上、あるいはⅢ度熱傷が10%以上の広範囲熱傷の場合には、重症として熱傷専門施設へ入院治療のうえ輸液などの全身管理が必要になります。Ⅱ度熱傷が15~30%、あるいはⅢ度熱傷が2~10%であれば中等症であり、一般病院での入院治療が必要となります。小児・高齢者では予備能力が低いため、Ⅱ度熱傷が20%以上、あるいはⅢ度熱傷が5%以上であれば重症、Ⅱ度熱傷が10~20%、あるいはⅢ度熱傷が2~5%であれば中等症となります。
(日本創傷外科学会.やけど(熱傷)より一部引用)
治療は保存療法として輸液や軟膏塗布、被覆材による保護を行います。外科療法としては壊死した組織を除去するデブリードマンや損失した皮膚を移植する植皮を行います。
看護問題・看護診断
- 体液量不足、脱水
- 低栄養
- 成長発達障害
- 安楽障害
小児実習で出会うことが多いため、小児を前提に挙げました。
体液量不足については皮膚バリアの損傷などにより、体液が喪失されやすい状態にあることや食欲不振などから摂水量が少なくなることから挙がりやすいです。
また、乳児の場合は母乳栄養のため、栄養状態も同時に悪くなります。
この状態のまま入院期間が長くなると、成長発達障害につながることもあります。
小児期のため、熱傷部位の知覚や治療に伴う不快感から安楽障害の状態になることも挙げられます。
ポイント
熱傷のポイントは小児期に伴う成長発達の視点を関連図に入れることです。
前述した通り、熱傷によって小児期における成長発達に障害をもたらす可能性があります。
看護学生が受け持つ場合は回復のタイミングのことが多いと思いますので、その後の生活に向けて現状の成長発達が順調か、治療などに伴う阻害要因などはないかなどは常にみておく必要があります。
関連図の症状の部分や治療の部分から伸ばして書いておきましょう。
熱傷の病態関連図
熱傷の病態関連図↓
参考引用文献
南山堂.看護のための臨床病態学改訂4版.p761
医学書院.看護診断ハンドブック第10版
医学書院.疾患別看護過程第2版
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